「なんか、噂になってんだよ。ラディス団長とトーラ」
「は?」
「笑っちゃうだろ? でも、そのお陰でこっちは、」
「こっちは?」
「あ、や……えっと」

 視線を泳がせているとじっと軽く睨まれた。

「何かあったのなら、先ず俺にと」
「わ、わかった。……その、一部の奴らにちょろっと絡まれて」
「一部の奴らとは?」

 その声音が一気に低くなって、慌てて首を振る。

「や、名前はわからない。本当に。と、とにかく、お前だって妙な噂立てられたくないだろ?」
「別に俺は誰に何を言われようと気にしないがな。……そうか、お前がそんな目に遭っていたとは……わかった。気をつけよう」
「頼む。私も気を付けるし」

 と、そこで私は思い出した。

「あ、そうだ、絡まれてるとこを助けてくれたのはザフィーリなんだ」
「は?」
「だから、あいつのこと許してやってくれよな。本当に、正義感にあふれた騎士にぴったりな奴なんだ」

 頬をピクピクと引きつらせた後でラディスは息を吐きながら「わかった」と頷いてくれて、私はほっと胸を撫で下ろしたのだった。