「待っ、――いっ」

 はだけた鎖骨のあたりを強く吸われて痛みを感じ、口から小さな悲鳴が上がる。
 その後でその場所を指先で優しくなぞられて、ぞくりとした。

「他の男のものになるのなら、いっそその前に……」

 その低い呟きを聞いて、私はやっと彼が何に怒っているのか理解した。

「離せっ!」

 空いていた方の手でその顔を引っ叩こうとして、しかしパシっとその手を取られ再びベッドに縫い付けられてしまった。

「こっの……っ」

 悔しくて、私はそのまま怒鳴った。

「勘違いすんな! ザフィーリは友達だって言ってんだろ!?」
「だが、惚れられて好きになったんだろう」
「誰もそんなこと言ってねーし!」

 そして私は続ける。

「私が好きなのはラディス、お前だって何度も言ってるだろーが!」
「……え?」

 ラディスの顔から怒りが抜け落ち、戸惑いに変わっていく。

「しかし、好きになったら抑えがきかない、と」
「だからお前のことだっつーの!」

 その顔が完全に呆けたようになって、私は更に続けた。

「昨日だってな、お前にキスされて、そのせいでトーラになるのすっかり忘れてたんだからな! そうだ、そもそもお前が私にあんな何度も何度もキスするからいけないんじゃないか!」