私は一呼吸置いてから、ゆっくりと順を追って話し始めた。
昨夜、うっかり藤花の姿でザフィーリに会ってしまったこと。
そしてなぜか一目惚れをされたらしいこと。
今朝そのことで問い詰められ、仕方なく藤花は妹という設定にしたこと。
もう一度会いたいと言われ、この宿に泊まっているはずだと言ってしまったこと。
そして、その辻褄合わせのために女将さんに協力をお願いしようと急いで都に来たこと。
「でもまさかラディスがここにいるとは思わなかったし、ザフィーリもてっきり来るなら夜だと思ってて……」
そこまで話すと、ラディスは案の定呆れたように大きなため息を吐いた。
「事情はわかった。しかし、なぜ俺に一言相談しなかった」
「だって完全に私のミスだし、忙しいお前に余計な手間をかけさせたくなかったし」
ラディスがもう一度短く息を吐くのを聞いて、私は続けた。
「ザフィーリは私と一緒で昼休憩の時間を使って都まで来たんだと思うんだ。私が急がせるようなことを言ったから……。だから、騎士の称号の剥奪だけは勘弁してやってほしい。頼む!」



