なんで奴までここに!?
 その手に抱えた大きな花束を見て、確実に私に、トーカに会いに来たのだとわかった。
 時間的に考えて私と別れてすぐに馬を走らせてきたのだろうか。

(てか、夜まで待てなかったのかよ!?)

 どうする……? パニックになりながら考える。
 奴は宿に向かっているのだろう。しかし今宿に行かれたらマズイ。まだ女将さんには何も伝えていないし、あそこには今ラディスがいる。
 もしザフィーリがラディスに私のことを話したら、もっとややこしいことになってしまう。

(だったら、今ここでザフィーリと会ってしまった方が……)

 もしかしたら会った瞬間になんか違ったと気持ちが冷める可能性だってある。
 そんなふうに立ち止まったまま逡巡していると、

「!」

ザフィーリとばっちり目が合ってしまった。
 その目が大きく見開かれて、すぐさま奴はこちらに駆け寄ってきた。見たことのない嬉しそうな笑みを浮かべて。