食堂兼宿屋の狭い部屋を抜け出し夜空を散歩することが、私の毎日の楽しみになった。
 空を飛んでいるときだけは、この世界に来て良かったと思えるのだった。

 しかしそれも寄宿舎に入ってからは我慢するようにしている。
 空を飛ぶには一度元の姿に戻らないとならなかったし、同室のイリアスに気づかれでもしたら大変だ。
 それでもごくたま〜に、あまりにもストレスが溜まったときなんかはこっそりと寄宿舎の窓から夜空へと飛び出している。
 ちなみに前回飛んだのは3回目の昇級試験に落ちた日である。

 今のところ、聖女の力についてわかっているのはこのくらいだ。
 絶大というわりに出来ないことが多く、この力でどうやって国を未来永劫繁栄させるというのか私にはさっぱりわからなかった。
 伝説なんていい加減なものだなと思った。

(それにしても、さっきの噂……)