笑顔で言うが、優しいイリアスは心配そうにこちらに顔を近づけてきた。
「本当に大丈夫なのか? よく見りゃ顔色悪ィな」
「マジで大丈夫だから! ほら、お前だってそんなに時間ないだろ? 行けって」
そう言って、私はその背中を軽く押しやった。
「……そうか? 無理はすんなよ。ヤバかったら医務室行けよ?」
「ああ!」
私が頷くと、イリアスは私の方を何度も振り返りつつ食堂の方へ向かっていった。
その姿が見えなくなり、ふぅと息を吐いてから私は急いで部屋へと駆けだした。
(なんか、イリアスへの秘密がどんどん増えていってる気がするなぁ)
チクチクと良心が痛むが、今は急がねばならない。
部屋に入るとソッコーで着替え、顔もささっと洗ってから私は部屋を出た。
そしてこの時間人目の付かなそうな場所を探し、念の為フードを被って顔を隠してから元の姿に戻り、私は空へと飛び上がった。
昼間に空を飛ぶのはこれが初めてだ。
徒歩だと都まで1時間程かかるが、空を飛んでいけば10分。
女将さんと話しても30分で戻ってこられるはずだ。
そして都の外れの、これまた人目の付かなそうな場所に降り立った私はすぐさま宿へと向かった。
都にはトーラの姿で何度かイリアスたちと買物に来ているけれど、元の姿で都を歩くのは約1年ぶりとなる。



