「酷い格好だね」
「ハハハ」

 前を向いまま言われて、乾いた笑いが漏れた。そして。

「ありがとな。助けてくれて」

 一応そうお礼を言う。
 あのままだったら、治せるとは言え確実に痛い目に遭っていただろうから。
 するとザフィーリはやはりこちらを見ずに素っ気なく言った。

「別に助けたつもりはないな。君を呼びに行ったら丁度あの状況だっただけだ。全く、ああいう輩が騎士を目指すなんて吐き気がするね」

 こういう奴だったなと思いながら苦笑する。

(……や、笑ってる場合じゃないな)

 これからザフィーリから何を言われるのか。
 私はごくりと唾を飲み込んだ。

 そのまま無言でついて行き、彼が足を止めたのはこの時間人気のない寄宿舎の裏手だった。
 しかしザフィーリはなかなかこちらを振り向こうとしない。

「で、話ってのは?」
「……昨夜だ」

 こちらの方から訊くと、ザフィーリはそう話し始めた。
 ぐっと手に汗を握る。
 そして彼はこちらを振り返り、大真面目な顔で言った。

「昨夜、僕は運命の人に出会ってしまったんだ」
「…………は?」

 大分間を開けて、私の口からはそんな呆けた声が漏れていた。