――そういうことを言う奴も中にはいるから気を付けろよ。

(マジでいるんだ、こういう奴)

 怒りよりも、驚きのほうが大きかった。
 そいつは私の前に柄悪くしゃがみ込むと、こちらを小馬鹿にするように言った。

「あの冷徹団長を落とした秘訣を教えてくれよ、トーラちゃん」
「……」

 呆れて何も言えずにいると、そいつは私の顎をぐいと掴み上げた。

「団長も趣味悪ィよなぁ。確かに男の中じゃ可愛い方かもしんねーけど? 女の方がいいだろうに。それともお前女以上のテクでも持ってんのか?」

 またその背後から笑い声が上がる。

「案外、あの冷徹団長もチョロいのな」

 下卑た笑いを浮かべそう言った男に、流石にカチンと来た。
 自分のことはどう言われようが平気だが、ラディスのことを悪く言われるのは我慢できなかった。
 私は男の手をパシっと払って立ち上がる。

「ラディス団長がオレなんか相手にするわけねーだろ。くだらねー勘違いしてんなよな」
「ああ?」

 男も立ち上がって私を凄い形相で見下ろした。

「それに、団長が試験に私情を挟むわけねーだろーが。イェラーキが見たいならな、お前だって団長にそう頼めばいいんだ。あの人は言うほど冷徹じゃないし。単にお前がラディス団長にビビってるだけじゃねーの?」
「んだと!?」

 男のこめかみにわかりやすく血管が浮き上がった。