……だとしたら。
(話すとしたら、キアノス副長か、ラディスか……?)
話すと言うより、その場合「報告」になるだろうか。
(……ラディスに先に言っておいたほうがいいかな)
いやいやと私は首を振る。
こんな馬鹿なミスで、あいつに迷惑はかけたくない。
それでなくとも団長としての仕事は大変だろうに、あのフェリーツィアという子の件もある。
(……ザフィーリの奴、昨日のことは夢か幻だと思ってくんないかなぁ)
はぁ、とまた大きなため息が漏れていた。
「トーラ?」
「え?」
「なんか元気ないけど大丈夫か? まだ調子悪いのか?」
食堂で目の前に座るイリアスにそう訊かれ、私は慌てて笑顔を作った。
「あ、いや、昨日なかなか寝つけなくてちょっと寝不足なだけ」
いつも通りイリアスと共に食堂に来たのはいいけれど、ザフィーリと出くわしてしまわないかと内心ビクビクしていた。
おそらくあいつはいつも人が少ない時間帯を狙って食堂に来ていて、だからいつもなら会うことはないのだが、この間のように気付いたら近くの席に座っているという可能性もある。
気が抜けなかった。



