私が聖女の力に気付いたのは、この世界に来て一月ほどが経った頃だ。

 一向に帰れる気配はなく、半ばやけくそ気味に食堂兼宿屋で皿洗いをしている最中、欠けた皿で指を切ってしまった。
 血の溢れてきたその指先を見つめながら、ふと考えたのだ。
 もし本当に私が伝説の聖女なら、もし本当に絶大な力があるというなら、こんな傷すぐに治せるのではないか。

 ダメ元で私は願ってみた。治れ、治れと繰り返し呪文のように念じてみた。
 すると傷の部分がぼんやりと光り出したように見えた。目の錯覚かと思い一度目を瞑り、そしてすぐに目を開け私は驚愕した。
 今さっきまで確かにあった傷が綺麗に塞がっていたからだ。

 まるで魔法だ。本当に私は聖女だったのだと正直興奮を覚えた。
 幼い頃、所謂「魔法少女」に憧れていたことを思い出した。可愛い女の子たちが変身しカッコ良く戦う姿がたまらなく好きだった。

 それから私は隠れて色々試してみた。
 その中で「変身」、姿を変えられることも知ったのだ。