おそらくはトイレにでも起きたのだろう。
 いつもはきちんと整っている銀髪が寝癖で酷いことになっているが、そんなザフィーリの目が私を見て驚きに見開かれた。
 そりゃ、こんな夜中に誰かに会ったらびっくりするよなと思いながら私は苦笑する。

「いやぁ、眠れなくってさ、ちょっと外に出て星を見てたんだ。んじゃ、おやすみ」

 こういうときのために考えていた台詞を言って、私は手を振りながら彼の横を通り過ぎた。
 そしてそのまま一度も振り返らずに自室の扉を開け中に入った。
 パタンと後ろ手に扉を閉めると途端イリアスの大きないびきが聞こえてきて、妙にほっとした。

(というかザフィーリの奴、おやすみの返事もなしかよ)

 相変わらず無愛想な奴だなと思いながら自分のベッドに上がろうとして、私はぴたりと動きを止めた。
 視界の端に、自分の長い髪が見えた気がした。
 
(……え!?)

 私は自分の頭に手をやる。――やっぱり、髪が長いままだ。