「また何か動きがあれば合図を送る。おやすみ」

 そう言って、ラディスは武器庫裏から寄宿舎の方へと戻っていった。
 誰かに一緒にいるところを見られたらマズイので、いつもこうして時間差で戻るようにしている。
 これまでは私の方が先に戻っていたのだけど、今日はラディスに先に戻ってもらった。

「……」

 そして、残った私はヘナヘナとその場に蹲った。

 ……キス、してしまった。

 ラディスと、キスをしてしまった……!

(うわぁーーっ!)

 まだ火照っている顔に手を当て私は心の中で思いっきり叫んだ。
 ……なぜ今回残ったのか。
 もう少し夜風に当たってこの熱を冷ましたかったからである。

(アイツ、キス魔か!?)

 こちとら初めてだったというのに何度も何度も……!
 そしてまた思い出して私はひとり悶絶した。

(っていうかアイツ、嫉妬深過ぎないか!?)

 この間のイリアスの件といい、今回のキアノス副長の件といい。
 そんなことで!? と思うようなところで不機嫌になられている気がする。