(実際考えてるんだけどね……)
そう思いながらスープを飲んでいるとイリアスは不服そうに続けた。
「なんだよ、お前は気にならないのか? 聖女様のこと」
「オレは別に、そんなには」
「マジかよ。聖女様だぞ? きっとめちゃくちゃ優しくて美しい方なんだろうなぁ~」
うっとりと視線を天井に向けた友人を見ながら、私は心の中で謝罪した。
(ごめんイリアス、美しくもなんともなくて)
剣道をしている姿を凛々しいと褒められたことはあるが、美しいなんて言われたことはない。
優しいかどうかも微妙なところだ。負けず嫌いだし、昔から男勝りだと言われてきた。
だからトーラの姿でいる間も特に男のふりをする必要はなかった。
素の自分でいればよかったから楽だった。
「見つかったら一度くらいお目にかかりたいよなぁ~」
「……」
(一応、今お前の目の前にいるけどな)
聖女といつも寝食を共にしていると知ったらこいつはどういう反応をするのだろう。
ちょっとだけ気にはなったが、勿論言うつもりはなかった。



