「聖女はまだ見つからんのか!」
「申し訳ありません! 国中を探しているのですが……」
今日も今日とて城内は騒がしい。
それもそのはず、異世界から現れるという伝説の『聖女』がなかなか見つからないからだ。
予言では、今年の花咲き誇る季節。まさに今。
しかし未だ聖女は姿を現さない。
国王は焦っている。
戦が始まろうとしている今、聖女の存在が勝敗を大きく分けるからだ。
聖女の力は絶大で、聖女が現れた国は未来永劫の繁栄が約束されるという。
しかし私は知っている。
この国に聖女が現れることはない。未来永劫、絶対に。
――なぜわかるのか。
(私が、その聖女だからだ)
私はこのレヴァンタ王国の騎士……見習いのトーラ。
本名は橘藤花。
日本からこの異世界にやってきた、一応伝説の聖女……らしい。
――なぜバレないか。
絶大な聖女の力で、男に姿を変えているからである。



