「着いたぞ」
興味のなさそうな、冷めた声でアラレに言われ、あまりの眩しさに閉じていた目を開いた。
アラレが言うほどのボロアパートではないが、畳は少し藁?が崩れたもので、ほぼ綺麗な状態だ。
「ここが、新居、、、」
「そうですぞい!」
後ろから、おじいさんの声が聞こえた。
「えっ?」
私は驚くことしかできなかった。だって、今の今まで、まるで気配を感じなかったんだから!
不思議に思って、アラレにこの、迷いに満ちた目線を向けると、アラレはおじいさんの方を向いて呆れていた。
「何してんだよ、栃野さん」
「ほっほっほっ、アラレ様、お元気そうで何よりですわい」 
「あぁ、栃野さんもな」
このおじいさんは栃野さんといって、
アラレに昔仕えていたらしい。
今はこの世界の、全体的な管理を任されているそう。
「千影様、ようこそ、アパート栃へ」
「ご丁寧な挨拶はいいよ、栃野さん」
「では、出来る限りそうさせていただこうかな?」
栃野さんは結構フレンドリーだ。
「わしはそろそろ管理室に戻ろうと思うぞい。アラレ様、後は頼みましたぞ。」
真剣な目つきで栃野さんはアラレを見据えたが、アラレは笑って返した。
「ふっ、栃野さん、何言ってるの。俺がこの程度のことができないとでも?」
暫くじっと、栃野さんはアラレをみていたけど、目つきを緩めて、ただでさえ細い目をまた細める。
そして朗らかに笑った。
「確かにそうですのぉ!」
こんな事態になって少し緊張気味になってたから、安堵したんだけど、キィッーって音がしたんだよ。
音の方を見るともう玄関先に栃野さんが移動していた。
いや、瞬間移動かよっ!
「栃野さんじゃーねー」
「ほっほっほ。アラレ様、千影様もまた。」
そう言って、栃野さんは帰っていった。