母が私を呼ぶ。 この宮には似つかぬ温厚でどこまでも優しい性格の彼女は父である天上天皇—てんじょうてんのう—の夫人であった。 そんな私の母は弟を産み落としてそのまま帰らぬ人となった。 その弟も朝日を見ずにその命を散らした。 ああ、そうか。これは夢なのだ。気づいてしまった瞬間、瞑った瞼が朝日に包まれた。