今日は、主従逆転遊びをしましょう。

「それはそうよ。形が大事だもの。だって、服もないのなら諦めるけれど、メイド服は新しい使用人用に余っているはずだし、お父様は今居ないし帰宅予定は先だから、服を拝借してもバレないと思うわ」

「……かしこまりました」

 グレンは足早に出て行き、私は後頭部にリボンを付けていただけで流していた金髪を、ひとつにまとめることにした。

 だって、慌ただしく仕事しているメイドが長い髪を流しているなんて、おかしいもの!


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「まあ……素敵よ。グレン。まるで、生粋の貴公子のようね」

「お褒め頂き光栄です。アデライザお嬢様も……良く似合われていますよ」

 私は髪をまとめてメイド服、彼はきっちりとした濃紺(ダークネイビー)のスーツを着ていた。

 本当に素敵。良く似合っている。あまり立ち入ったことを聞くのも無粋だけど、元軍人のはずなのに立ち振る舞いも気品を感じるし、彼はどこかの跡継ぎではない貴族令息なのかもしれない。

 あら……最近、お腹の出て来たお父様の服にしては、グレンの体に合っているようだけれど、もしかしたら、誰かの服を借りたのかもしれない。若い時のものかしら?