今日は、主従逆転遊びをしましょう。

 暗に言うことを聞かないなら脱走を企てるぞと脅せば、グレンは額を押さえてはーっと大きく息をついた。

 だって、ここに居るグレンの主な役割は、私の世話と監視だ。

 他の家族だって居ないのに、社交デビューもまだの私がどこかへ脱走してしまったとなれば、執事の彼はたちまち仕事を失ってしまうことだろう。

 我がジョプリング辺境伯家は、古い貴族で広い領地を持ち裕福なことでも知られている。我こそがと手を挙げる使用人候補もたくさん居るのだ。

 そこに運良く雇われたのだから、仕事を失いたくないはずよ。

「……アデライザお嬢様。出来るだけご希望を叶えたく思いますが、僕の年齢を考慮に入れて、遊び方の選択をしていただけますか」

「ふふふ。良いわよ」

 渋々頷いたグレン。もしかしたら、幼い子どものようにかくれんぼやおにごっこでもさせられると思ったのかしら? そんなわけないでしょう。

 私はソファからサッと立ち上がり両手を腰に当てると、死んだ魚のような目になったグレンと向かい合った。

「あの……何をされます? アデライザお嬢様」