この自分はまったく暇ではないと言いたげに、つい数日前から我がジョプリング家に仕えることになった若き執事グレンは答えた。

 彼はかなり背が高く前職は軍人で、鍛えられた大きな身体を持っていた。きらめく青い目には丸眼鏡を掛けていて、黒い髪はきっちりと後ろへ撫で付けている。

 鋭さがある整った容貌に、ほがらかな笑みを浮かべるところなんて、ここ数日を共にしている居るけれど未だ見たことはない。

 あまり……笑わない人なのかもしれない。

「……ねえ。今日はグレン、忙しいの?」

「今日は、そうでもございませんよ。このように、お嬢様のお傍に居る程度には暇にしております」

 グレンは私の質問を聞いて、意図が不可解に思ったのか、首を傾げつつ答えた。

 彼がこの邸に来てすぐの五日前ほど、お父様は広い領地の見回りをしに出て行った。つまり、新入り執事グレンは、残された私のお目付役をさせられているのだ。

 我が家には既に二人の執事が居て、一番若い執事となったグレン。もしかしたら、最年長のベンジャミンが引退するため、彼が代わりにと雇われたのかもしれない。この前も腰を痛めたと数日休んでいたし。