今日は、主従逆転遊びをしましょう。

「ジョプリング家の領地には、複雑な地形を持ち領地内でも寒暖差が大きく育ちやすい作物をこちらが指定することで、それぞれの土地に住む領民たちにも良い効果をもたらすと考えられます」

 私は手を前に組んでそう言い、グレンはどう思うかと自分が聞いた癖に、驚いた表情を浮かべていた。

「……いや、良く勉強をしているな」

「グレン様はここに来て短いから私のお父様が、どれだけ教育熱心なのかを知らないですものね。貴族たるもの、国のために尽くせる人間になれが口癖ですもの」

 私はグレンの言葉に肩を竦めた。

 もっとも、本来ならば貴族令嬢にはこのような知識は、あまり必要ないのだ。

 お父様は二人の兄二人の姉にも私と同じように厳しい教育を施し、彼らは王城で文官として若くして大出世したり、高位貴族に嫁いだりしているので、結果的に間違いではなかった。

「……それは、素晴らしい。なるほど。ジョプリング辺境伯は、聞きしに優るほど、まことに有能な人物だな」

 グレンは納得したように、何度か頷いた。お父様は彼を雇ってすぐにこの邸を出たから、色々と知らなくても無理はない。