今日は、主従逆転遊びをしましょう。

 あら。なんだか、とっても絵になるわ……だって、グレンは少し見ただけでも美形だもの。融通の利かなそうな面がなければ、私だって好きになってしまうかもしれないわ……。

 いえいえ。何を言っているの。いけないわ。

 私は貴族なのだから、使用人と恋に落ちるなんて、あり得ないもの。

 貴族と平民が恋をすれば、大体不幸になる。それは、歴史的に何度も何度も飽きるほどに繰り返された事実なのよ。

「アデライザ……」

「はい!」

 壁際に控えていた私は名前を呼ばれたので、本を開いたままのグレンへと近寄った。

「何でございましょう。グレン様」

「アデライザはこのことについて、どう思う?」

 グレンの手にある本のページには、穀物栽培に関して、ここ数年の研究資料が書かれていた。

「はい。穀物は温度の低い場所の方が、良く育ちます。気候に合わせた作物を育てることによって、収穫量は増えますし、領民たちは飢える可能性が少なくなります。領民が増えれば税収は増え、おのずと国王陛下は喜ばれるでしょう」

「この領地での具体的な対策としては、何をどうすれば良いと思う?」