今日は、主従逆転遊びをしましょう。

「これから、どうなさいます……?」

「敬語は禁止よ! あ……禁止でございます。グレン様」

 私は時計を指さして、グレンへこの遊びが始まったことを伝えた。

 グレンはそこでほっと息をつき、ソファへと腰掛け長い足を組んでいた。

 私は慌てて先んじて彼が持って来てくれた手押し車に置かれた茶器に熱湯を淹れ、見様見真似でお茶を出す。

 カチャンと茶器が鳴ってしまって、しまったと思ったけれど、グレンは無言で私の目を見るだけだった。

 ほっと安心して息をつき、私は使用人がそうするように壁際へと戻った。

 ……そして、グレンはカップに口を寄せお茶を飲むと、何度か咳き込むと息をついた。

 しまったわ。もしかしたら、味が濃かったのかもしれない。けれど、メイドに扮した私がグレンに話しかけることは許されない。

 使用人の役目は雇い主である貴族からの問いかけや命令に答えるだけなのだ。

 やがて、グレンは本棚に置かれていた本を手に取り、足を組んで読み始めた。