【柱:芸術大学・放課後のデッサン室】
【ト書き】
夕陽が差し込むデッサン室の窓際。
成海と新菜は、静かに向かい合って絵を描いていた。
モチーフは、テーブルの上に置かれたグラスと光。
でも、新菜は描きながらふと、視線を前に向ける。
成海の横顔──
線を引くたびに、どこか遠くを見ているようなまなざしがあった。
【新菜(内心)】
(成海くん……やっぱり、まだ少し、心ここにあらずって感じする)
【ト書き】
けれど、それでもいいと思えた。
焦らずに、そばにいられることが今は何より大事で。
【新菜(小さく笑いながら)】
「……ねぇ、成海くん」
【成海(手を止めて)】
「ん?」
【新菜(少し顔を赤らめながら)】
「……今日ね、咲耶さんの手紙、もう一度読み返したんだ」
【成海(少し目を伏せて)】
「……そうか」
【新菜】
「“成海くんの未来を、あなたの色で染めてあげてください”って、書いてあったの」
【ト書き】
成海は、目を細めて新菜の顔を見た。
その瞳に、以前よりほんの少しだけ光が戻っていた。
【成海(ゆっくり)】
「……じゃあ、お前は何色なんだ?」
【新菜(きょとんとして)】
「え?」
【成海】
「俺を染める色。お前自身が、どんな色だと思う?」
【新菜(少し考えて)】
「……夕陽の色、かな」
「赤でも、オレンジでも、金色でもなくて……全部が混じってるあの一瞬の色」
【成海(目を細めて微笑む)】
「……いい色だな」
【新菜(照れたように笑って)】
「……成海くんは?」
【成海(新菜を見つめたまま)】
「……お前にしか、わからない色」
「それを……これから見つけていけばいい」
【ト書き】
その声が、どこまでもやさしくて。
新菜の胸が、ゆっくりとあたたかく染まっていく。
【新菜(そっと微笑んで)】
「うん。……じゃあ一緒に探していこう」
【ト書き】
ふたりの視線がふっと交差した。
窓の外、沈む夕陽のなかで、
新しい色が生まれていくようだった。
【柱:次の日、芸術大学・共同制作の教室】
【ト書き】
美術学部の恒例企画──ペアでの共同制作課題が発表された。
【教授(教室前で発表中)】
「今年のテーマは、“あなたと描く、心の風景”です。
二人一組で、一枚の大きなキャンバスにひとつの風景を描いてもらいます」
【ト書き】
ざわつく教室のなかで、名前が読み上げられる。
「久瀬成海──沢渡新菜」
【新菜(思わずびくっとして)】
「えっ……」
【ト書き】
横を見ると、成海がゆっくりこちらを見て微笑んでいた。
【成海(くすっと)】
「よろしく、パートナーさん」
【新菜(少し頬を染めて)】
「……こ、こちらこそっ」
──
【柱:制作アトリエ・放課後】
【ト書き】
広いキャンバスを前に、ふたりきりの空間。
新菜は緊張しながらも、下描きの鉛筆を走らせていた。
【新菜(つぶやくように)】
「“心の風景”って、難しいよね……」
【成海(筆を持ちながら)】
「じゃあ、お前にとっての“心”って何色?」
【新菜(少し考えてから)】
「……人のぬくもりみたいな色」
【成海(頷いて)】
「じゃあ、俺は……それに触れて変わっていく色にする」
【ト書き】
ふたりの想いが少しずつ、線と色に重なっていく。
違う筆、違うタッチ。
だけど、どこか似ていて、違和感がなかった。
【新菜(筆を置いて、ふと成海を見る)】
「……成海くんってさ」
「いつも迷いなく線を引くよね」
【成海(苦笑しながら)】
「迷ってるよ。……でも今は、お前が隣にいるから」
【ト書き】
その一言に、新菜の鼓動が跳ねた。
耳まで熱くなるのを隠すように、俯いて筆を握る。
【新菜(照れながらも小さく)】
「……そんなの、ずるい」
【成海(少し笑って)】
「でも、嬉しいだろ?」
【ト書き】
視線が合う。
一瞬、空気が静かに変わった。
新菜は思った。
こんな風に、少しずつ心を溶かしていけるなら──
咲耶さんがくれた“未来”に、胸を張れる気がする。
【新菜(小さく微笑んで)】
「……ねぇ、成海くん」
【成海】
「ん?」
【新菜】
「今度……一緒にスケッチ旅行、行こうよ。
少し遠くて、咲耶さんが行きたがってたあの海の方まで」
【成海(驚いた顔で、やがてやさしく微笑んで)】
「……ああ、いいな。それ」
「咲耶も、きっと一緒に来てくれる気がする」
【ト書き】
ふたりで描くキャンバスは、まだ下描きの途中。
でも、少しずつ、確かに“未来の風景”になりつつあった。
【ト書き】
夕陽が差し込むデッサン室の窓際。
成海と新菜は、静かに向かい合って絵を描いていた。
モチーフは、テーブルの上に置かれたグラスと光。
でも、新菜は描きながらふと、視線を前に向ける。
成海の横顔──
線を引くたびに、どこか遠くを見ているようなまなざしがあった。
【新菜(内心)】
(成海くん……やっぱり、まだ少し、心ここにあらずって感じする)
【ト書き】
けれど、それでもいいと思えた。
焦らずに、そばにいられることが今は何より大事で。
【新菜(小さく笑いながら)】
「……ねぇ、成海くん」
【成海(手を止めて)】
「ん?」
【新菜(少し顔を赤らめながら)】
「……今日ね、咲耶さんの手紙、もう一度読み返したんだ」
【成海(少し目を伏せて)】
「……そうか」
【新菜】
「“成海くんの未来を、あなたの色で染めてあげてください”って、書いてあったの」
【ト書き】
成海は、目を細めて新菜の顔を見た。
その瞳に、以前よりほんの少しだけ光が戻っていた。
【成海(ゆっくり)】
「……じゃあ、お前は何色なんだ?」
【新菜(きょとんとして)】
「え?」
【成海】
「俺を染める色。お前自身が、どんな色だと思う?」
【新菜(少し考えて)】
「……夕陽の色、かな」
「赤でも、オレンジでも、金色でもなくて……全部が混じってるあの一瞬の色」
【成海(目を細めて微笑む)】
「……いい色だな」
【新菜(照れたように笑って)】
「……成海くんは?」
【成海(新菜を見つめたまま)】
「……お前にしか、わからない色」
「それを……これから見つけていけばいい」
【ト書き】
その声が、どこまでもやさしくて。
新菜の胸が、ゆっくりとあたたかく染まっていく。
【新菜(そっと微笑んで)】
「うん。……じゃあ一緒に探していこう」
【ト書き】
ふたりの視線がふっと交差した。
窓の外、沈む夕陽のなかで、
新しい色が生まれていくようだった。
【柱:次の日、芸術大学・共同制作の教室】
【ト書き】
美術学部の恒例企画──ペアでの共同制作課題が発表された。
【教授(教室前で発表中)】
「今年のテーマは、“あなたと描く、心の風景”です。
二人一組で、一枚の大きなキャンバスにひとつの風景を描いてもらいます」
【ト書き】
ざわつく教室のなかで、名前が読み上げられる。
「久瀬成海──沢渡新菜」
【新菜(思わずびくっとして)】
「えっ……」
【ト書き】
横を見ると、成海がゆっくりこちらを見て微笑んでいた。
【成海(くすっと)】
「よろしく、パートナーさん」
【新菜(少し頬を染めて)】
「……こ、こちらこそっ」
──
【柱:制作アトリエ・放課後】
【ト書き】
広いキャンバスを前に、ふたりきりの空間。
新菜は緊張しながらも、下描きの鉛筆を走らせていた。
【新菜(つぶやくように)】
「“心の風景”って、難しいよね……」
【成海(筆を持ちながら)】
「じゃあ、お前にとっての“心”って何色?」
【新菜(少し考えてから)】
「……人のぬくもりみたいな色」
【成海(頷いて)】
「じゃあ、俺は……それに触れて変わっていく色にする」
【ト書き】
ふたりの想いが少しずつ、線と色に重なっていく。
違う筆、違うタッチ。
だけど、どこか似ていて、違和感がなかった。
【新菜(筆を置いて、ふと成海を見る)】
「……成海くんってさ」
「いつも迷いなく線を引くよね」
【成海(苦笑しながら)】
「迷ってるよ。……でも今は、お前が隣にいるから」
【ト書き】
その一言に、新菜の鼓動が跳ねた。
耳まで熱くなるのを隠すように、俯いて筆を握る。
【新菜(照れながらも小さく)】
「……そんなの、ずるい」
【成海(少し笑って)】
「でも、嬉しいだろ?」
【ト書き】
視線が合う。
一瞬、空気が静かに変わった。
新菜は思った。
こんな風に、少しずつ心を溶かしていけるなら──
咲耶さんがくれた“未来”に、胸を張れる気がする。
【新菜(小さく微笑んで)】
「……ねぇ、成海くん」
【成海】
「ん?」
【新菜】
「今度……一緒にスケッチ旅行、行こうよ。
少し遠くて、咲耶さんが行きたがってたあの海の方まで」
【成海(驚いた顔で、やがてやさしく微笑んで)】
「……ああ、いいな。それ」
「咲耶も、きっと一緒に来てくれる気がする」
【ト書き】
ふたりで描くキャンバスは、まだ下描きの途中。
でも、少しずつ、確かに“未来の風景”になりつつあった。


