深夜13時の夜行バス


『これで、私はあのひとと永遠に一緒。
本当にありがとう。


あ、そうそう。

お礼にこの真珠のイヤリングをあなたにプレゼントするわ。彼のお葬式につけてあげて。

私は必要ないから』


葵さんは私の手にそっと真珠のイヤリングを握らせた。それは幻でも何でもなく、土で汚れた真珠のイヤリング。きっと遺体の耳につけられていたものだろう。


『ありがとう』


彼女は本当に嬉しそうにそう一言言い置いて、私から手を離した。

私は呪縛から解かれたように、ぐらりと体が傾いた。

彼女の目的は―――

あの世で『一臣さん』と再会することじゃなかった。

一臣さんの面影を残した塩原を連れて行くこと。



探していたのは、塩原。

私が以前、アパートの寝室で夜中に見た……たぶんあれは葵さんの手だ。夢ではなく、あれは現実だった。その手に私の手に重なったとき、彼女に『探して』と言われた気がしたけど

もしかして


『返して』

だったのかもしれない。


青い薔薇の花ことばは『存在しないもの』と言う言葉がある。


塩原は青色の薔薇の下、まるで眠るように動かなくなった。

塩原――――……!


葵さんの目的は―――



『ありがとう、あなたのお陰で

あのひとを永遠に私一人のものにできる』


青い薔薇の中で彼女の声を聞いた気がした。




~Fin~