どうしよう……
あんなに会いたいと願っていたのに、いざ遭遇すると足元から恐怖が這い上がってくる。
足や手はがくがく震えたし、彼女の顔を直視することができない。
全身が凍り付いたように寒く、スーツの上着を脱いでいた私は白いカットソーから覗いた腕に鳥肌が立ったのが分かった。体温がゆっくりと奪われていく感じ。
私は身動き一つできずごくりと喉を鳴らした。
葵さんは―――ゆっくりとこちらを向いた。
その気配に、彼女の姿を見るのが怖いのに、私はやはり顔をあげて彼女の顔を見ていた。
その顔は私と全く同じ造りの顔。まるで鏡の中の自分を見ているようだ。
けれど葵さんのその表情はただただ
無表情だった。
『探しているの』
彼女はか細い声で言った。それは絞り出すような、聞き耳を立ててないと聞こえない程小さな小さな……
「真珠の………イヤリングですか?」
恐る恐る聞いてみる。何でこんなこと聞いたんだろう。
100年前も前に亡くなった―――幽霊に。
けれど葵さんは寂しそうにゆるゆると首を横に振った。
『私が探しているのは乗車券。あのひとの元に行きたいの』
私は目を開いた。
葵さんは、ただ
ただ
一臣さんに会いたかったんだね。
私はお財布をバッグから取り出した。その中に大事に仕舞ってあった古い古い乗車券。
最初から何故か捨てる気にならなかったのは、今日葵さんと会う為だったのかもしれない。
「お探しのものはこれ―――ですか」
おずおずと葵さんの白い手に差し出すと、葵さんは大きな目をまばたき、両手を口元に当てた。
『ずっとずっと―――探してた……』
彼女の目にうっすら涙が溜まった。それはとてもきれいな透き通った涙だった。
「これで一臣さんに会えますね」



