深夜13時の夜行バス


どうしよう……
あんなに会いたいと願っていたのに、いざ遭遇すると足元から恐怖が這い上がってくる。

足や手はがくがく震えたし、彼女の顔を直視することができない。

全身が凍り付いたように寒く、スーツの上着を脱いでいた私は白いカットソーから覗いた腕に鳥肌が立ったのが分かった。体温がゆっくりと奪われていく感じ。

私は身動き一つできずごくりと喉を鳴らした。

葵さんは―――ゆっくりとこちらを向いた。

その気配に、彼女の姿を見るのが怖いのに、私はやはり顔をあげて彼女の顔を見ていた。
その顔は私と全く同じ造りの顔。まるで鏡の中の自分を見ているようだ。

けれど葵さんのその表情はただただ
無表情だった。



『探しているの』



彼女はか細い声で言った。それは絞り出すような、聞き耳を立ててないと聞こえない程小さな小さな……

「真珠の………イヤリングですか?」

恐る恐る聞いてみる。何でこんなこと聞いたんだろう。
100年前も前に亡くなった―――幽霊に。

けれど葵さんは寂しそうにゆるゆると首を横に振った。



『私が探しているのは乗車券。あのひとの元に行きたいの』



私は目を開いた。
葵さんは、ただ

ただ

一臣さんに会いたかったんだね。

私はお財布をバッグから取り出した。その中に大事に仕舞ってあった古い古い乗車券。
最初から何故か捨てる気にならなかったのは、今日葵さんと会う為だったのかもしれない。

「お探しのものはこれ―――ですか」

おずおずと葵さんの白い手に差し出すと、葵さんは大きな目をまばたき、両手を口元に当てた。


『ずっとずっと―――探してた……』


彼女の目にうっすら涙が溜まった。それはとてもきれいな透き通った涙だった。


「これで一臣さんに会えますね」