塩原はバス停まで送ってくれた。
バスが来るまでずっと隣に居てくれた。
今日の乗車客も私一人。
「ホントに―――大丈夫なのかよ、一人で」
酷く心配そうである。
さっき弓削くんから『幽霊話』を聞いたばかりだろうか。
「うん、大丈夫、大丈夫」
本当は恐怖で足ががくがくしている。恐怖からか真夏だと言うのに背中は悪寒と言うのか寒すぎるぐらい寒い。
と言うのも、葵さんは昨日のバス、とうとう私の前の席に座っていたから。
でもその恐怖を隠しながら私は空元気に笑った。
それに正直、あのバスに乗った喪服の女性が葵さんなのか、幽霊なのかどうか分からない。
本当は葵さんとは何の関係もなく生きた人間かもしれないし。
「明日のプレ・オープン頑張ろうね!」私は空元気に塩原の背を叩いた。
「……ああ」塩原は曖昧に頷いた。
ただ
心残りは『一臣さん』の消息が最後までつかめなかったことだ。
葵さんの叔母さんの話では一臣さんは二人の子供を設けていたらしい。つまりその子孫が存在していてもおかしくない。
けれど一臣さんの苗字も分からないし、手は尽くしたけれど今日まで結局探し上げることはできなかった。
私は今日も深夜バスに乗る。
そして眠くなかった筈なのに、またもすぐに寝てしまった。
ふと、隣に誰かが座る気配を感じたとき、私はうっすらと目を開いた。
傾いていた頭を何とか持ち上げ、目を開けると、相変わらずの喪服姿、ピンと背中を張って姿勢よく
その横顔は私と全く同じ―――そして片耳に真珠のイヤリングは
なかった。
葵さん――――………!



