深夜13時の夜行バス


夜もとっぷり暮れて、私たちはとうとう諦めることにした。

「ごめん、塩原。ここまで付き合ってくれたのに収穫が殆どなくて」
コンビニで買ったアイスコーヒーを手渡しながら塩原に謝ると
「良いってことよ。どうせ休みで何もやることなかったし」

塩原―――いいヤツ。

葵さんの想い人、一臣さんも塩原みたいな人だったらいいな。
とほんの少しの希望。

でも私は決意していた。

怖い、と言う気持ちもあった。けれどもうこの方法しかない。


「私、あの深夜バスに乗るよ」


「え?」塩原が顔を上げる。
「私がバスで会ったのは間違いなく葵さんだよ。葵さんに会うのはそれしか方法がない」
「いや……それは危険じゃ……」
「葵さんが私をあの世に連れて行こうと?」私は苦笑い。
塩原は頷いた。

「私は葵さんに会いたい。何でか今まで恐怖しか浮かばなかったけれど、
ただ私に一臣さんの存在を調べて欲しいだけじゃないかな」

「そんなの分かんねぇじゃん」
「私にも分からない。でも―――この乗車券は渡したい」

私はお財布に仕舞った古い古い乗車券を取り出した。

そもそもこの乗車券が全ての始まりだった。

「じゃぁ俺もついてく」と当然のように塩原が申し出たが、私はゆるゆると首を横に振った。
「私一人じゃないと意味がないんだよ。一臣さんと一緒になりたかった葵さんの気持ちを考えると、葵さんは私一人に一臣さんを見つけて欲しいんだよ」
「だけど……」塩原は尚も渋っていた。

「私は大丈夫」

何の根拠もないけど、少なくとも今まで葵さんが私に危害を加えることは一度もなかった。