深夜13時の夜行バス


我知らず―――……私は涙を流していた。

そんなに哀しい過去があったのだ。

あの不可思議な夢、そして無くした真珠、片道切符。
全てが―――繋がった。

会いたかったんだね。

ずっとずっと


何年も

ううん、何十年も


一臣さんに


だから彼女に似た私にその切符や真珠のイヤリングを見つけて欲しかったんだね。
これは私が体験した恐怖体験じゃない。
そこには悲しい過去があったのだ。

「あなたが―――」

叔母さんが声を発した。

「葵の生まれ変わりなのなら、あなたには幸せになって欲しい。葵の分まで」
叔母さんはしわがれた手をそっと伸ばして私の手を握ってきた。

温かい―――手だった。

気付けば紀子ちゃんも私の斜向かいで「ぐすっぐすっ」と鼻を啜って泣くのを堪えているようだった。

私は――――
ご安心ください、私は葵さんの分まで幸せになれます、


塩原と―――


とは言い切れなかった。

でも当時の葵さんの気持ちは理解できた。

あの切符も真珠も夢も―――全て私を通して葵さんの夢を、希望を叶えて欲しかったんだ。

しかし、色あせた過去は決して美しいものではなかった。
幼馴染の『一臣さん』も葵さんの縁談が決まった直後、隣の農家の娘と結婚して二人の子供をもうけていた、と。叔母さんは葵さんが亡くなったあと知ったらしい。

何も知らなかった葵さん―
ううん、知らない方がいい。

想い出は美しいままとっておくのが一番。