「はっきりとは分からないけど、お祖母ちゃんには姪がいて……お祖母ちゃんのお姉さんの娘さんがいたって聞いたことがあります。
でもその写真の人……若くして亡くなったって…」
「亡くなった……」
私は目を開いた。
「………もしかして……事故で……?」
震える声が何とか喉から出る。
「……はっきりは知りません。でも写真はこの一枚で。まるで誰にも見られないように隠されていて」紀子ちゃんは俯いた。
紀子ちゃんが当時のことを分からなくて当然の事だ。何せ100年は経っているであろうから。
もっと詳しく話を聞きたかった。けれど紀子ちゃんは詳細を知らないようだった。
「あの…念のためにお伺いしますが、この方のお名前は―――……」と聞いたところで
ガタンっ!
派手な音が背後から聞こえて思わず振り返った。
この人が紀子ちゃんの言うお祖母ちゃん、なのだろう。殆どが白い髪で覆われ、しかしながら粋な和服姿がその髪型にマッチしていた。歳の頃は80代前半を思わせた。
しかしながらピンと張られた背筋から老いた年齢をあまり感じられない。
そのご老人は持っていたふろしきに包まれた長細い箱のようなものを床に派手に落としたが、拾おうとはしなかった。
ただ驚愕と言った感じで目を開いて突っ立っている。
そしてその女性はどことなく、この写真の女性と似ている気がする。
「……葵……」
そのご老人は確かにそう言った。大きく目を開いて口元に手をやっている。
葵――――……
今度は私が目を開く番だった。
私が夢で見た。
「違うの、お祖母ちゃん。この人は飲料水メーカーの営業さんで…えーっと…」と紀子ちゃんに渡した名刺…彼女の手元にある名刺を見て
「勝手にお邪魔して申し訳ございません。紀子ちゃんを責めないであげてください。
わたくしは 前川 由利と申します。こっちは私の同僚、塩原 匠、決して怪しいものではありません」
私は自分の名を名乗り、ここに来た目的を話し聞かせた。



