深夜13時の夜行バス


その家は立派な日本家屋で、まさに「お屋敷」と言った感じだ。(おもむき)があるって言うのかな。
それはこの令和の時代と激しくミスマッチだ。国宝級と言ってもいい。

古めかしい木の門扉は雨や風でさらされ随分と古びていた。

表札に『那倉』と書いてあった。
「何て呼ぶんだろう。”なくら”?」私が首を傾げていると

いかにも後から付けました、という少し新しめのインタホンがあって「とりあえず聞いてみよう」と塩原がそのインタホンを押した。

ピンポーン
と渇いた音が響いた。

『はい…』

中から想像もしなかった若い女の子の声が聞こえてきた。
思わず塩原と顔を合わせる。

だって今まで訪ねていった人たちは大抵ご老人だったから。声からすると高校生ぐらいに思えた。
「あの、わたくしこういう者で」と会社名を名乗り、近くにカフェを作ること、そして古い写真を集めていることを説明すると、門扉からおずおずと……やはり高校生を思わせる女の子が顔を出した。

可愛らしい…子だった。

肩までの黒い髪、目を大きく唇は甘いチェリーを思わせるグロスが乗っていた。今風の女の子だけど、この近くに高校など無いから、街の方まで通っていると思うとちょっと気の毒になった。

が……

女の子は私を見るなり、はっと息を呑み、大きな目をさらに大きく見開いた。



「どうして……」



女の子の第一声はこうだった。

『どうして』?何が『どうして』なのだろうか。
「あの……?」思わず顎をひくと
「ちょっと、来てください。今、お祖母ちゃんが留守だから」と言って私の腕を引く。

「え!え?」

わけも分からず私は女の子に手を引かれるまま、思いもかけずその立派な日本家屋に足を踏み入れることになった。