深夜13時の夜行バス


私は目だけを上げて
「せめて『ここ、良い?』とかないわけ?」
ああ、可愛くないな…こんな自分。

けれど塩原はめげずに??と言うか堪えていない…と言うか慣れてる?
「ここ良い?」
今更ながら聞かれてもね。もうちゃっかり座ってるじゃん。

断れないじゃん。
まぁ断る理由もないし、イヤじゃないけど。

「例のスポーツクラブの件、どうなった?」と塩原に聞かれ
「んー、好感触って言うか、固まった」とあっさり報告しながらタブレット端末をスワイプしていると
「さっすが♪」と塩原の弾んだ声が聞こえて、私はまた顔を上げた。
「何が嬉しいの?私たち部署に戻ればライバルだよ?」
「ライバル…て言うか前川には勝てないって分かってるし。俺、負けるって分かってて無駄な努力しないの」
「努力、しろよ」思わず目を吊り上げると

「そ、だから初めてなんだよなー、『負けるかも』って思ってて努力したんは…」塩原はどこか物憂げの表情で割りばしを割る。

「それは……」
どう言う意味?

と言葉が出る前に
「お疲れ様で~す♪」

またも同じテーブルの椅子をがたつかせて、勝手に弓削くんが私の斜め隣に座ってきた。
結局、塩原の言いたかったことは分からず…

いや、何となくニュアンス的に感じ取ったけど…
て言うか、二人とも。私の了承を得てからにしてくれ。
これじゃまともに資料を見られないじゃない。