深夜13時の夜行バス


■1時の真珠

何で嫌な時間と思ったのだろう。
それは一昨日乗ったバスと関係しているのだろうか。

いやいや、違うでしょ。
頭を振り、掛布団の裾をきゅっと握り布団の中に潜り込むと

ころころ……

小さな―――とても小さな音がすぐ近くで聞こえた。
何の音だろう。
布団の中で目をまばたいた。

ころころ…

その音はまたも聞こえてきた。
何て言えばいいのだろうか、小さな物が物とぶつかる、そんな感じの音だ。

それ以外例えようがない。
あ……そう言えば、幼い頃田舎のおばあちゃんの家に遊びに行ったとき、おばあちゃんの家でビー玉遊びをした、その音とよく似ている。

止せばいいものの、私は何故か布団から顔を出し、その音がなる方へ耳を傾けた。

ころころっ…

また音が響いた。
どこで―――……?

ころっ

すぐ近くだ。
目をまばたきながら、私は枕元に置いたメガネを手繰り寄せ掛けた。
すると暗闇の中、ころころと”何か”が転がってくるのが見えた。
”それ”はやはりビー玉のようだった。
”ビー玉”と例えたのは(あた)らずと雖も遠からず、と言うところか。

何だろう。

暗がりの中、メガネの奥で目を細めながら、その転がってきた”ビー玉”に手を伸ばしたとき、

私は”それ”が初めて真珠の粒だと言うことに気付いた。

何で―――…?
私、こんな大きな真珠のアクセサリー持ってないけど……

その瞬間だった。

私の手に”誰か”の手が重なった。
白い手だけが暗闇からにゅっと出てきていて、私の手首を掴んでいる。

――――!!!

私は目を開いた。

「ひっ―――!」

短く悲鳴をあげる。
それだけで充分な恐怖なのに、

その手の主は


『―――――……て』


女の……か細い声が暗闇の中、何事か呟き、

「ひっ!」
再び叫び声をあげ、思わずその白い手を払いのけ、”真珠”から慌てて手を離すと
その白い手がすぅっと後退しながら消えていき、やがて”真珠”だけが残った。