青春あまねく恋泥棒


「何で笑うんだよ」

「胸とか言うかと思って」

「…は?」


今までで1番怖い怪訝な顔を見せてきた。


「俺のことバカにしてんの?」

「別に」


もういっそ、ちゃっちゃと嫌われたい。

私が恋愛なんて向いてないんだから。

そう思ったら、胸の上あたりがぐじゅぐじゅと気持ち悪い感じがした。

なんでだろう、苦しい。嘘ついてるみたい。


「なんでまた泣きそうな顔してんだよ。俺が見たいのは笑ってる閑姫だよ」


そんなこと言わないでよ。

苦しくなるじゃん。


私は弁当箱を空にして、立ち上がった。


「あのさ、怜弥くん」

「なんだよ」

「私、好きになることないからさ、ムキになって好きにさせようとか、もう諦めてよ」

「ムキになってるわけじゃねーよ。普通に閑姫と付き合いたいだけ」

「それをムキになるっていうんだよ」


そんなこと言いながら、ずっと胸の上あたりがずっとぐじゅぐじゅしていた。


「諦める気ないから。最悪好きにならなくていい、ただ傍にいさせてよ」


せり上ってくる苦しさ。傍にいさせてって。
何のメリットも無いのに?
私がしたい恋愛みたいだ。


「明日も明後日も、天気良かったら屋上で昼飯食お?」

「好きになりたくない」

「なんて?」