「何があったの?」
「昨日一緒に帰ろって言われてさ。それで駅で告白された」
「ええ?!」
「でも、そんな、私みたいな一般市民とモテモテ男子が釣り合うわけないし、夏木くんと付き合うなんて考えたことなかったからさ。ごめんなさいって言ったんだけど…」
「けど、夏木は諦めてないーって感じか…」
「うん」
「んー確かに諦め悪そうアイツ」
そう話していると、後ろから気配がして、左手が私の左側から現れる。
「なに、俺の話してたの?」
怜弥くんだった。
「ねえ、閑姫借りていい?」
「どうぞー」
恋南の裏切り者!
彼は私の右手を掴むと、手を引っ張る。左手で弁当箱を慌てて掴んで、怜弥くんについていく。着いた場所は屋上だった。
「ちょっと…!」
「なに?」
「友達とご飯食べようと思ってたのに」
「俺だって、好きな子と昼食いたいじゃん」
「う…」
クールそうな雰囲気なのに、平気でそういうこと言うんだから。
思わず好きになりそうだ。
まあ…私が、朝起きたら急に美人女優並の顔面にでもならなきゃ、怜弥くんの彼女になんてならないのに。
「怜弥くんの付き合いたいっていうそれは、多分、今まで告白して百発百中だったのに、OK貰えなかったの悔しくて、ムキになってるだけだよ」
「は…?」
怜弥くんは、昨日私が自分を卑下した時のような怪訝な顔をした。
「俺の気持ちナメてんの?俺本気で…」
「恋愛なんかそんなもんだよ」
「俺の気持ちナメんな」
私は少し、去年の秋のことを思い出していた。
思い出したくなかったな。



