青春あまねく恋泥棒


「えっ、いや…なんかそれは…」

「嫌なの」

「嫌っていうか…」

「前後じゃ話しづらいだろ」

「そうだね」


そうだけど、別に話してないんだよな。何も。

私みたいな、ド平凡女子が、夏木くんの横歩くのは抵抗あるんだよ…。

私なんかが横歩くのは恐れ多いというか。

ましてや彼女でもあるまいし。


「とりあえず話しにくいから隣来て」

「あ…うん」


恐る恐る横に行く。若干後ろ気味で。


「なんで車道側なんだよ…はあ」


そう言って彼は、私を建物側にする。
何でそんな優しくするの…!まあ分かるわ、顔だけじゃないモテる理由。

一緒に帰ろうと言った割には、駅まで特に何も話してこない。目的は一体何だったんだろうか。

駅に着いてしまう。


「夏木くんはどっち方面?」

「ちょっと待て」

「え?」

「言いたいことあって、一緒に帰ってきた」


改札の近くでそう言ってきた。


「無言でここまで来て、意味分からなかったよな。ごめん」

「ううん」


言いたいことの内容に、思い当たる節が無かった。


「市宮」

「は、はい」

「市宮が好きだ」


目を見開いた。


「付き合ってほしい」


口をポカンとしてしまった。

でもその目は本気だった。