青春あまねく恋泥棒



とりあえず、お茶でも出してあげるか…。

私が立つと、


「どこ行くんだよ」


と言う。


「いや、暑いとこわざわざ来たんでしょ。お茶くらい出すよ」

「ああ…ありがと」


大人しくなった。


「また閑姫がいなくなる気がして怖くなった」

「また?」

「急に帰っちゃっていなくなって。次の日もいなくて」

「別に私1人いなくたって、世界は何も変わらないよ」

「俺の世界はめちゃくちゃ変わる」

「そう。はい、お茶」

「ありがとう」


ソファに座って、お茶を飲む。

別に、来たところで。何かが変わるわけじゃない。

転校しようかな、なんて考えてたくらいだった。


「あのさ、閑姫」

「なに」

「俺の気持ち、一切変わってないから」

「そう」

「素っ気ない態度されても、好きだ」

「そう」

「いつか、俺に向けて笑いかけてくれるって信じてるから」


いつもに増して、声が優しい気がした。

ああ…弱ってんな私。だめだこんなんじゃ。

強くいなきゃ。流されてしまう。


「お茶飲んだら帰ってね」

「いや、明日から学校行くって言うまで帰らない」

「普通に迷惑」

「じゃあ明日から来る?」

「はいはい行きますよー」

「来ないやつだ」