青春あまねく恋泥棒


「閑姫あのさ、家帰ってからめっちゃ唇ごしごし洗ったから。1番キスしたいの閑姫だし」

「あっそ」


心臓がバクバク言ってる。

そりゃ、怜弥くんは今まで彼女いたし、キスだってそれ以上だってしたことあるだろうから、そこはもういいんだけど。なんでこんなに心が痛いの?


「だからさ閑姫あの…」

「もういい!」


半分泣きそうになりながら、強くそう言っていた。

軽く息切れしていた。

なんでこんな必死になってるの。

別に好きになんかなるつもりなかったのに。

好きになっちゃったから?

好きになんかなるな!ばかばかばか!

どうせまた傷付くだけなのに、なんでよ!


「閑姫…」


私の頬に手を伸ばしてきた。

なんでそっちが泣きそうな顔してるのよ。

ふと我に返って、私は手を払いのけた。


「触んないでよ」


伸ばしていたその手を、彼は握り締めて下ろした。


「俺のこと、そんなに嫌い?」

「…嫌い」


嘘だ、嘘だけど。

嘘つくしかないでしょう?


なんだか居たたまれなくて、教室からリュックを持って飛び出した。


「閑姫?!」


その日から、私は学校に行かなくなった。