青春あまねく恋泥棒


ある日の放課後。

私は帰ろうと身支度をしていた。

リュックを背負って、振り向くと。


「わっっ」


至近距離に、学年1モテると言っても過言じゃない、夏木くんがいた。

びっくりした私は、椅子と机にぶつかり、がしゃんと派手に音を鳴らす。


「な、なに?」

「この後、空いてる?」

「え、は、あ、え?」


質問に答えるのもままならない。


「駅まで一緒に帰りたい」


?!?!?!

どういうことだ?!

今まで話したことも接点も無い。

口をあんぐり開けてアホ面を晒していることを自覚して、口元に手を当てる。


「だめ?」

「え、あ、いや、うん、別に、大丈夫だけど」


目的が分からなくて、それに何よりイケメンに対する免疫が無さすぎて戸惑っているけど。


「じゃあ、帰るぞ」


そう言って、彼は歩き出した。
私も慌てて、彼の後ろを歩く。

校門を出て、なんとなく夏木くんの後ろを歩いていると、振り向いてきた。


「なんで、俺の後ろ歩いてんの」

「へ?」


声が裏返って恥ずかしかったのはともかく。


「隣、歩いてくれないの」


思ってもいなかった一言だった。