「そういえば、先輩って黒橋公園の近くにある、パン屋でバイトしてますか?」
「え、…はい」
どうして分かったのだろうか。
そんな私の心を読んだように、彼は言った。
「そこ、よく妹と一緒にパン買いに行くんですよ」
「えっ、そうなんですか…!?妹さんいるんですね」
「僕も家族もあそこのパンが好きなんです。唯一無二というか…」
「実はそのパン屋、私の家が経営しているんです。そう言ってもらえて嬉しいです…!」
「そうなんですか!」
普段は電車で人と話すことはなく、新鮮な気持ちに加えて居心地がいい。なにげない雑談をしているうちに、まだ名前を聞いていないことに気がついた。
「あの、お名前なんて言うんですか?」
「僕の名前は、――――」
「黒橋駅、黒橋駅です。お出口は右側です」
彼の声は、電車の到着アナウンスに遮られてしまった。この駅に止まる電車は扉が閉まるのが早い。
「あ…!すみません!降りますね!」
私は急いで、電車を降りた。
(大事な時に限ってどうしていつも…)
私は昔から運が悪い。どうしてかは分からないけれど、小さい頃からずっとそうだった。今はもう慣れたこと。でも今日は、彼とも出会えたし、電車の席も空いていたのだからちょっぴり運がいいのかも。そんなことを思いながらガチャッとドアを開くと、香ばしいパンの香りが漂う。
「え、…はい」
どうして分かったのだろうか。
そんな私の心を読んだように、彼は言った。
「そこ、よく妹と一緒にパン買いに行くんですよ」
「えっ、そうなんですか…!?妹さんいるんですね」
「僕も家族もあそこのパンが好きなんです。唯一無二というか…」
「実はそのパン屋、私の家が経営しているんです。そう言ってもらえて嬉しいです…!」
「そうなんですか!」
普段は電車で人と話すことはなく、新鮮な気持ちに加えて居心地がいい。なにげない雑談をしているうちに、まだ名前を聞いていないことに気がついた。
「あの、お名前なんて言うんですか?」
「僕の名前は、――――」
「黒橋駅、黒橋駅です。お出口は右側です」
彼の声は、電車の到着アナウンスに遮られてしまった。この駅に止まる電車は扉が閉まるのが早い。
「あ…!すみません!降りますね!」
私は急いで、電車を降りた。
(大事な時に限ってどうしていつも…)
私は昔から運が悪い。どうしてかは分からないけれど、小さい頃からずっとそうだった。今はもう慣れたこと。でも今日は、彼とも出会えたし、電車の席も空いていたのだからちょっぴり運がいいのかも。そんなことを思いながらガチャッとドアを開くと、香ばしいパンの香りが漂う。
