こう考えている間に顔を見つめすぎてしまったのか、それとも気遣ってくれたのか彼の方から話しかけてくれた。

「…もしかして、次の電車ですか?」
と質問が投げかかる。

「え…はい、」

「どこの駅で降りますか?」

「黒橋駅です」

「あ、僕その次の日下部駅です」

「あ…!近いですね」

「ですね」

会話を終えると、彼は携帯へ視線を移し、イヤフォンを付ける。音楽が好きなのだろうか?

「まもなく1番ホームに電車が参りますので黄色い線までお下がりください」

電車が来る予告アナウンスが終わるとすぐ、電車がやってきて風がなびく。電車の扉が開き、降りる人を待つ。その時、いつもの日常では気にしなかった彼が目に入る。答えという宝箱にもう少しで手が届きそうなのに届かない。電車から人が降り、電車に乗り込む。するといつも席が空いていないのにも関わらず、今日はなぜか席が少し空いていたので座ることにした。すると彼は私の横に座り、イヤホンを耳から外すと、私に話しかけた。