ピアス。
響きもなんだかきれいだなあ、と、子供心に思った。
耳に穴をあけるということも教えてもらったけれど、少しも怖いとは思わなかった。
大人になったら、ピアスを開けてみよう。そう思った瞬間だった。
ピアスが好きなことを隠すようになったのは、それから一年ほどのこと。
特にこれといった事件はなかったけれど、父が母の耳にじゃらじゃらとついているピアスを見て「気持ち悪い」と言ったことが、今でも耳の奥にこびりついて離れない。
夫婦の関係はとっくに冷え切っていたから、そう言うのも無理ないのかもしれないけれど。
でも小学生の世界なんてすごく狭くて、きっと、家族と友達で埋まってしまうくらいで。
だからこそ父のその言葉だって衝撃的だったし、父がそう言うなら「気持ち悪い」のかもしれないと思った。
だから、友達には隠すようにしたけれど。
