棗、一回でいいから抱いて。そんな風に言える勇気があったらこんなことにはなっていないだろう。


「 ん…ぁ、ぁ…~!」


自分にとって都合のいい妄想を膨らませると、呆気なく達してしまう。

けれど膨らみに膨らんだ妄想と現実との乖離が大きくて、余計に虚しくなってしまうのもまた、認めざるを得ない事実だった。

今までそういう目的の相手を作ったことはなかったけれど、そろそろ頃合いなのかもしれない。それに、幾度も身体を重ねれば、棗を忘れられることができるかも。


…なんて、そんなこと。情はできるだろうけれど、それが恋慕に変わることをちっとも想像ができない。



俺はきっといつまでも棗が好きなのだと、ため息をついた。