放課後なんて人が居ないし、この量のプリントをかき集めるなんて…時間かかっちゃうな……






なんて、思っていたのに。





「 …手伝うよ。」


頭上から聞こえた嗄声に、咄嗟に声が出なかった。


クラスメイトの、葛生 梓。

誰も手伝ってくれたことがなかったそれを、彼はいとも簡単にやってのけた。

「…ありがとう。」
か細く出たその言葉に、彼は小さく笑ってみせた。




それからしばらく、彼のことを目で追う日々が続いた。

最初は分からなかったけれど、時が経つにつれて、彼が学校で有名なあの人だということが分かってきた。


理由は、彼の容姿を見ればすぐに理解できる。


濡羽色の艶めいた髪、薄く色付いた唇、細く骨ばった手。
肌は陶器みたいにつるつるで、女の子顔負け。
極め付けに、長い睫毛に縁取られた、切れ長で少し吊り上がった瞳。
そんなのに見つめられたら、そりゃあみんな好きになっちゃうと思う。……頭も良いし。