椎葉 棗に呪われたい

間違いなく今まで会ってきた中で一番に奇麗な人だったし、セックスも上手かったし、話も楽しい。正直文句はない。けれど、彼と共に時間を過ごせば過ごすほど、本来の想い人を思い出す気がしてならなかった。

ぐるぐると考えている間にいつの間にか教室につき、自席に座る。


「 アズ、おはよー。」



隣の席のヤツが話しかけてくる。

夏川(なつかわ) 郁巳(いくみ)。俺をアズと呼ぶ、唯一の友人だ。



「 なんか今日はお疲れだね。登校もいつもより遅いし、彼女でもできた?朝帰り?」


「 あー……んなわけ、」



彼女ではないものの、正直殆ど間違っていなくて背筋にたらりと冷や汗が流れる。
けれど彼はそれに気付く様子はなく、ひとつ欠伸をした。



「 なぁんだ、つまんねぇの。……あ、おまえ、幼馴染が好きなんだっけ?」



ふと落とされた爆弾発言にぴく、と体が動く。