俺の高校に着いたのは、それから約5分後のこと。
本当なら、車でも20分はかかるはずなのに、どれだけ飛ばしたんだ…という恐ろしいことは考えないようにした。
「 ありがとう、ございます。」
「 いいよ、僕のせいで遅くなったようなものだから。」
「 いえ…俺も、着いていきましたし。」
「 はは、梓って良い子だよね。きみに好かれる子は幸せだろうなあ。」
天海さんの全てを見透かしたかのようなその言葉と瞳に、俺は一瞬怯んだ。
彼に棗を重ねていること……悟られている?
なんとなくこれ以上見透かしてほしくはなくて、若干俯き、長い前髪で顔が見えないようにした。「はは、そうですね。」こんな乾いた笑いで、隠せているのだろうか。
「 では…さようなら。」
「 うん。」
敢えて『また』ではなく、『さようなら』という言葉を使った。

