「 や~…でも、」
「 連絡入れてないでしょう?このままだと騒ぎになっちゃうかも。」
「 ………お願い、します。」
渋々返事をしてから、俺はなにをしてるんだ、と大きく息を吐く。
初恋が叶わずヤケになって初対面の男にお持ち帰りされ、滅茶苦茶に抱かれて挙句に遅刻、なんて……何度でも思うが、阿呆だ。あまりにも阿呆すぎる。
自己嫌悪に陥りながらも学校に行くなら急ぐか、とすぐに服を着、ホテルを出る。
「 完全に忘れてましたけど、村雨さんたちはまだここにいるんですか?」
「 そう。まだお愉しみかな、盛るねぇ。」
そんな愉悦が含まれた声を聴きながら、プライベートホテル?の駐車場に置いてある黒のブガッティに乗り込む。
…かなり珍しい高級車のはずだが、なぜこの人が当たり前に乗っているのか。この人は何者なのか。なんて疑問は、とりあえず置いておくことにしよう。
俺の学校わかりますかね、呉葉高校…なんですけど、とためらいがちに言えば、「 わかるよー 」と呑気な声が返ってくる。
俺は車に揺られながら、本当にこの人に個人情報を教えてよかったんだろうか、と後悔した。
