まあでも、いまさらそれに気づいたところで、それは大した意味を為さないか。どのくらい危険なひとかはまだ分からないけれど…たまには、火遊びもいいでしょう?
「 怖がらないの?梓。」
ひろーい個室に入り、鍵をかけて、振り返る天海さん。
「 今更なんです?あなたがここに連れてきたんでしょう。」
読めない表情でいる彼を、誘うように目を細めた。ギシ、と音を立ててベッドに座る。彼は一瞬目を見開いたけれど、すぐに妖艶な笑みをこぼしてゆっくり近寄ってきた。
バーではまじまじと見なかったけれど、天海 千里という男は、顔の造りが美しいのはもちろん、所作までもが美しいらしい。ふいに俺の頬をその長い指が這って、ついビク、と反応してしまう。
「 はじめて?」
視線を俺の口許に落としたまま、そう問いかけられる。
「 …ええ、はじめてといえば、そうですね。」
