金曜日の夜のゲイバー。


普段なら行かないそこだけれど、やっぱり相手が欲しいなら善は急げということで、来てみることにした。

…今日も、やっぱり雨。
アイツからの連絡はきたけれど、またずぶずぶと沼に入っていくのが嫌で、今日くらいは、と拒否をした。


まだ時間が早いから周りも飲みは序盤なようで、乾杯の音をにぎやかに鳴らし、出会いを求めている。何も考えず来たはいいものの、行き慣れておらずろくに知り合いがいないために一人で寂しくソフトドリンクを頼んだ。


「 ねえ……きみ、かっこいいね。」


「 …ありがとうございます。」


どこかで見覚えのある、媚びるような目つき。
恐らくおれよりかなり年上で、あまり経験したことがないが、所謂ゲイバーではこういうこともまああるよなとどこか他人事のように思う。相手は『その気』みたいだけれど生憎おれはそうはなれず、適当にあしらった。



「 ここには一人で来たの?危ないよ?」



「 えー…一人、ですね。 」