数日後:噂と現実

レイとハルの距離は、“絶妙な非公式交際”として、校内の噂になっていた。

「なあなあ、真島って最近すっげー大人しくなってね?」
「え、でも生徒会のメガネと付き合ってるってマジ?」

レイは噂話に聞こえないふりをして、廊下を歩く。けれど耳は全部拾っている。

横を歩くハルが、ふと立ち止まり、囁く。

「聞こえてるくせに、無視してえらいな」

「うっせ……。あたし、アンタと一緒にいるってだけで結構我慢してんのよ」

「……それは誉め言葉として受け取っていい?」

「どうだろね? ただ……あたし、昔みたいに暴れたりしないのは……」

レイは立ち止まり、ハルの横顔を見つめた。

「……あんたが、“裏切らない人”だって分かったからだよ」

ハルは一瞬だけ、視線を逸らした。

「……その言葉、何度聞いても嬉しいと思う自分がいる」