第一幕:裏切りの開幕

校舎裏。夕陽が落ちる寸前、燃えるような茜色の光の中で、真島レイは立ち尽くしていた。

「……マジかよ。ユウト、お前……」

その目の前で、川野ユウトが、レイの親友・千明ユリと抱き合っていた。

「は?レイ……!」

ユリが気まずそうに身を引く。ユウトは悪びれた様子もなく、むしろ面倒くさそうにため息をついた。

「お前が最近、情緒不安定でめんどくさかったんだよ。悪いけど、ユリのほうが俺に合ってんの」

その瞬間、レイの拳が勝手に動いていた。だが――。

「っ!?」

拳がぶつかったのは、まったく無関係の第三者だった。

「……やれやれ、理不尽にもほどがあるな」

冷静な声。ぶつかった相手は、メガネを押し上げた倉科ハル。生徒会副会長で、超優等生として有名な男だった。

「え、なんで……!? ご、ごめん……! って、なんであんたここにいんのよ!?」

「さっきから騒がしかったからね。喧嘩は校則違反だ。ビンタもだ」

「はあ!? ビンタは正当防衛だし、しかも……いまのは事故!」

「なら……まずは落ち着こうか。暴力より、冷静に話すべきだ」

そんな冷静な態度に、レイの怒りは空振りのまま行き場を失った。